AKANE
(この少年王、われわれサンタシを出し抜こうとしているとはまるで思えぬ・・・。やはり、城で言っていた通り、玉座を乗っ取られたというのは誠か・・・?)
朱音はきょろきょろと周囲を見回した。目の前を遮るこの半透明の巨大な壁、これは朱音のよく知るあの人物が作り出したものに違いなかった。
「ロラン! いるんでしょ!? この壁を消して!」
突如大声で叫び始めた朱音にぎょっとして、ディートハルトは細っこいその肩に手を置いた。
「クロウ陛下、なぜ彼の名を・・・?」
「わたしは彼の友達なんです。彼にこの壁をなんとかさせないと」
そう言うと、再び朱音は大声を張り巡らし始めた。
「ロラン! 聞こえているんなら返事して!」
覚醒して間もないこの少年王が、なぜサンタシの国王直属の魔術師の名を知り、出会う筈もないのに友人だと口にしたのか、もはやディートハルトには理解出来かねた。
この少年王は狂っているのか、それとも何かの策略なのか。しかし、この必死さを見るに、到底裏切りを狙っているものとは思えない。
「煩い、聞こえている」
意外にも、それ程離れていない岩陰から小生意気な少年術師の声が発された。
朱音ははっとして声のした辺りを振り返った。
そこには、灰色のローブに身を包み、鏡の洞窟でしていたときと同じように静かに座り、巨大な結界の壁に向かって手を掲げている懐かしい少年の姿があった。
「ロラン・・・!」
アザエルによって血だらけになって洞窟内で倒れていた姿からは想像もできない程、彼はぴんぴんしているようであった。そのことにほっとしながらも、朱音は涙ぐみながら少年の元へと駆け寄った。
「僕に話し掛けるな、集中力が途切れるだろうが。それでなくとも、あの槍使いに簡単に破られた箇所の修復に精神を集中させなくちゃならないってのに」
ふんっと鼻を鳴らし、魔術師の少年ロランは口元を歪ませて鬱陶しそうにあしらった。
「お願い、ロラン。早く二人を止めないと取り返しがつかないことになっちゃう」
がくがくと肩を揺す振られ、ロランは集中の為に閉じていた瞳をやっと開いた。
朱音はきょろきょろと周囲を見回した。目の前を遮るこの半透明の巨大な壁、これは朱音のよく知るあの人物が作り出したものに違いなかった。
「ロラン! いるんでしょ!? この壁を消して!」
突如大声で叫び始めた朱音にぎょっとして、ディートハルトは細っこいその肩に手を置いた。
「クロウ陛下、なぜ彼の名を・・・?」
「わたしは彼の友達なんです。彼にこの壁をなんとかさせないと」
そう言うと、再び朱音は大声を張り巡らし始めた。
「ロラン! 聞こえているんなら返事して!」
覚醒して間もないこの少年王が、なぜサンタシの国王直属の魔術師の名を知り、出会う筈もないのに友人だと口にしたのか、もはやディートハルトには理解出来かねた。
この少年王は狂っているのか、それとも何かの策略なのか。しかし、この必死さを見るに、到底裏切りを狙っているものとは思えない。
「煩い、聞こえている」
意外にも、それ程離れていない岩陰から小生意気な少年術師の声が発された。
朱音ははっとして声のした辺りを振り返った。
そこには、灰色のローブに身を包み、鏡の洞窟でしていたときと同じように静かに座り、巨大な結界の壁に向かって手を掲げている懐かしい少年の姿があった。
「ロラン・・・!」
アザエルによって血だらけになって洞窟内で倒れていた姿からは想像もできない程、彼はぴんぴんしているようであった。そのことにほっとしながらも、朱音は涙ぐみながら少年の元へと駆け寄った。
「僕に話し掛けるな、集中力が途切れるだろうが。それでなくとも、あの槍使いに簡単に破られた箇所の修復に精神を集中させなくちゃならないってのに」
ふんっと鼻を鳴らし、魔術師の少年ロランは口元を歪ませて鬱陶しそうにあしらった。
「お願い、ロラン。早く二人を止めないと取り返しがつかないことになっちゃう」
がくがくと肩を揺す振られ、ロランは集中の為に閉じていた瞳をやっと開いた。