AKANE
(まさかとは思うが・・・、城を空けた隙に国王の座を乗っ取られたということはないだろうな・・・? いや、まさか・・・な。憎むべき敵国の俺に、どうしてあの王がそこまでする必要がある・・・?)
けれど、初めてゴーディアで少年王に謁見したとき、切なげにこちらを見るめていた彼の表情や、その美しい頬を伝って零れた一粒の涙が何度も思い出されて仕方が無い。
そしてあの夜、彼の首に手をかけたとき、あの世にも美しい少年王は、抵抗の一つもせず、じっと声もなく泣きながら瞳を閉じていた。まるで、フェルデンに自らの命を捧げるつもりかのように・・・。
(お前は一体、何なんだ・・・、クロウ・・・!)
馬の手綱を握る手に思わず力が入るが、突然すぐ脇から、
「フェルデン様!」
と、女の声で呼び掛けられた。
はっと現実に戻って隣をに視線をやると、ゴーディアの女騎士がすぐ隣を馬で走らせていた。
「お前は・・・」
「ゴーディアの黒の騎士、タリアと申します。ライシェル指令官補佐から伝言を預かって参りました」
馬の走る速度を落とさないまま、フェルデンはタリアにこくりと頷いた。
「実は、クロウ陛下が疲労でお倒れになりました・・・。ライシェル指令官補佐は陛下の意識が戻られるまでは少し休みをとると、そして、その後必ずこちらに追いつくとお伝えするように命令を受けました」
「倒れた・・・?」
傍で一部始終を耳にしていたアレクシが、疑わしげな目でタリアを睨んでいたことに、フェルデンは気付いてはいなかった。
「ええ。陛下はかなり過酷な旅をして来られたようです。体力的にも、精神的にもとうに限界を過ぎておられます。心配はご無用です。ライシェル指令官補佐なら、一日程度の遅れならすぐに追いついて来られますから」
相当の速さで駆けさせているにも関わらず、それでも一日程度ならば追いつけるというタリアの自信あり気な言葉に、フェルデンは、
「わかった、信用する」
と、意外にもあっさりと返した。
しかし、心中はひどく動揺していた。なぜかはわからないが、自分が何か重要な事柄を見落としてきたのではないか、という胸騒ぎを覚えずにはいられなかった。
けれど、初めてゴーディアで少年王に謁見したとき、切なげにこちらを見るめていた彼の表情や、その美しい頬を伝って零れた一粒の涙が何度も思い出されて仕方が無い。
そしてあの夜、彼の首に手をかけたとき、あの世にも美しい少年王は、抵抗の一つもせず、じっと声もなく泣きながら瞳を閉じていた。まるで、フェルデンに自らの命を捧げるつもりかのように・・・。
(お前は一体、何なんだ・・・、クロウ・・・!)
馬の手綱を握る手に思わず力が入るが、突然すぐ脇から、
「フェルデン様!」
と、女の声で呼び掛けられた。
はっと現実に戻って隣をに視線をやると、ゴーディアの女騎士がすぐ隣を馬で走らせていた。
「お前は・・・」
「ゴーディアの黒の騎士、タリアと申します。ライシェル指令官補佐から伝言を預かって参りました」
馬の走る速度を落とさないまま、フェルデンはタリアにこくりと頷いた。
「実は、クロウ陛下が疲労でお倒れになりました・・・。ライシェル指令官補佐は陛下の意識が戻られるまでは少し休みをとると、そして、その後必ずこちらに追いつくとお伝えするように命令を受けました」
「倒れた・・・?」
傍で一部始終を耳にしていたアレクシが、疑わしげな目でタリアを睨んでいたことに、フェルデンは気付いてはいなかった。
「ええ。陛下はかなり過酷な旅をして来られたようです。体力的にも、精神的にもとうに限界を過ぎておられます。心配はご無用です。ライシェル指令官補佐なら、一日程度の遅れならすぐに追いついて来られますから」
相当の速さで駆けさせているにも関わらず、それでも一日程度ならば追いつけるというタリアの自信あり気な言葉に、フェルデンは、
「わかった、信用する」
と、意外にもあっさりと返した。
しかし、心中はひどく動揺していた。なぜかはわからないが、自分が何か重要な事柄を見落としてきたのではないか、という胸騒ぎを覚えずにはいられなかった。