AKANE
何より先代の王ルシファーが、息子のクロウに、指令官補佐である自らの存在について、話して聞かせていたことがあまりに意外だった。偉大で強大な魔力を有するあの魔王には、きっとどんな有能な部下でさえ、いるもいないも同じことに違いない、そうライシェルは思っていたのだ。彼が必要としていた人物は、いつだって、あの碧髪冷徹の上官、アザエルだけだと・・・。
「それなら話は早いよね。あなたの魔笛であれをここへ呼んでよ」
少年王はすっと頭上を指差した。
ふたりの遙か上の空を優雅に飛びかう巨大な鳥。
あれは、レイシア一の巨大鳥、ゾーン。一時は飛行手段として飼い慣らそうとする者達もいたが、あまりに気性が荒く、頭の悪い凶暴なあの鳥は、如何なる獣使いであれその手を持て余させた。結局、今では誰もがあの鳥を手放し、決して手出ししない。ついでに言うと、食用としても、この鳥の肉は強烈な匂いと固さで売り物にもならない。
「クロウ陛下、いくらわたしが魔笛を使えるとはいえ、あの鳥はお薦めできかねます。確かに、あれの背に乗れば、あっという間に皆に追いつくことができるでしょう。けれど、ゾーンは非常に頭が悪い・・・」
実際、何度かライシェルもあの鳥を魔笛で操作しようと試みたことがある。しかし、一時的にいうことを聞かせることができても、魔笛の音が止んだ途端、近くにいる動くもの全てを敵と見なし、狂乱して手がつけられなくなるのだ。
「じゃあどうやって追いつく? 飛竜なんか使ったら、そこら中の注目をあっという間に集めてしまうよ。それとも、ゾーンよりも早く距離を縮められる獣の当てなんてある?」
勿論、ここで休みをとると決めたとき、ライシェルに全く考えが無かった訳ではない。
「陛下・・・、利口な銀獅子ではいけませんか?」
盲目なライシェルの目を、じっとクロウは見つめ返した。
「悪くはない・・・。だけど、銀獅子は陸を駆けるじゃないか。空中なら、最短距離を一直線に詰められる。それも、あの鳥なら誰にも気付かれずに」
普通の者ならば決して選ぶことのない手段。目の前の少年王は、確かにあの魔王ルシファーの血を色濃く受け継いでいた。
ライシェルは呆れて小さく溜息を漏らした。
「それなら話は早いよね。あなたの魔笛であれをここへ呼んでよ」
少年王はすっと頭上を指差した。
ふたりの遙か上の空を優雅に飛びかう巨大な鳥。
あれは、レイシア一の巨大鳥、ゾーン。一時は飛行手段として飼い慣らそうとする者達もいたが、あまりに気性が荒く、頭の悪い凶暴なあの鳥は、如何なる獣使いであれその手を持て余させた。結局、今では誰もがあの鳥を手放し、決して手出ししない。ついでに言うと、食用としても、この鳥の肉は強烈な匂いと固さで売り物にもならない。
「クロウ陛下、いくらわたしが魔笛を使えるとはいえ、あの鳥はお薦めできかねます。確かに、あれの背に乗れば、あっという間に皆に追いつくことができるでしょう。けれど、ゾーンは非常に頭が悪い・・・」
実際、何度かライシェルもあの鳥を魔笛で操作しようと試みたことがある。しかし、一時的にいうことを聞かせることができても、魔笛の音が止んだ途端、近くにいる動くもの全てを敵と見なし、狂乱して手がつけられなくなるのだ。
「じゃあどうやって追いつく? 飛竜なんか使ったら、そこら中の注目をあっという間に集めてしまうよ。それとも、ゾーンよりも早く距離を縮められる獣の当てなんてある?」
勿論、ここで休みをとると決めたとき、ライシェルに全く考えが無かった訳ではない。
「陛下・・・、利口な銀獅子ではいけませんか?」
盲目なライシェルの目を、じっとクロウは見つめ返した。
「悪くはない・・・。だけど、銀獅子は陸を駆けるじゃないか。空中なら、最短距離を一直線に詰められる。それも、あの鳥なら誰にも気付かれずに」
普通の者ならば決して選ぶことのない手段。目の前の少年王は、確かにあの魔王ルシファーの血を色濃く受け継いでいた。
ライシェルは呆れて小さく溜息を漏らした。