AKANE
「何もあなたに全部任せる気ないから安心してよ。あの鳥をここに呼んで、少しの間大人しくさせてくれればいいからさ」
そう言って、クロウは地面に敷かれていたライシェルのマントを拾い上げ、ついた土を丁寧に払ってから藍の衣と一緒に彼に手渡した。
ライシェルは、衣とマントを纏いなおすと、しぶしぶ腰のベルトに装備していた魔笛の袋に手をやった。思いの外小ぶりなその横笛を、少年王は興味深げに見つめる。
「ほんとに、どうなってもしりませんよ」
魔笛に口をつける直前、ライシェルは少年王に最終通告をした。
この歳若い王が、一体何を考えているのかわからなかったが、言われる通りに指令官補佐の男は魔笛を奏で始めた。
しかし、確かに魔的を奏でているだろうに、その音はほとんど耳には聞こえてこない。時折、笛を通り過ぎる僅かな呼気の音だけがする程度であった。
少年王は綺麗な音色が聴けるものとばかり思っていたのか、些か残念そうな表情を浮かべていたが、しばらくすると、頭上の鳥の様子がおかしいことに勘付き始めた。
酔ったように蛇行しながら空を旋回し始める。仕舞いには高度を落とし、ふらふらと頭を振りながら降下していた。
人の耳には聞こえない、特殊な音波のようなものが、魔笛から発されているのかもしれない。
とうとう二人の目の前に、巨大な鳥が降り立った。遠くから見るのとは違い、ゾーンは想像以上の迫力だった。
身体の割に小さい頭は、禿げ上がり、身体を覆っている黒と白の羽毛は、お世辞にも美しいとは言えない。あちらこちらに毟りとられた後やすでに塞がった傷が目立つ。この鳥は、共食いをして生存する稀な種で有名だ。おそらくは、これらの傷はそのときにできたもの達であろう。
「ビャア」
耳障りな潰れたような声で、ゾーンが鳴いた。
赤い目が不機嫌な様子を物語っている。今、ライシェルが魔笛を吹くのをやめたとしたら、間違いなく、この鳥は二人に襲い掛かってくるだろう。
そう言って、クロウは地面に敷かれていたライシェルのマントを拾い上げ、ついた土を丁寧に払ってから藍の衣と一緒に彼に手渡した。
ライシェルは、衣とマントを纏いなおすと、しぶしぶ腰のベルトに装備していた魔笛の袋に手をやった。思いの外小ぶりなその横笛を、少年王は興味深げに見つめる。
「ほんとに、どうなってもしりませんよ」
魔笛に口をつける直前、ライシェルは少年王に最終通告をした。
この歳若い王が、一体何を考えているのかわからなかったが、言われる通りに指令官補佐の男は魔笛を奏で始めた。
しかし、確かに魔的を奏でているだろうに、その音はほとんど耳には聞こえてこない。時折、笛を通り過ぎる僅かな呼気の音だけがする程度であった。
少年王は綺麗な音色が聴けるものとばかり思っていたのか、些か残念そうな表情を浮かべていたが、しばらくすると、頭上の鳥の様子がおかしいことに勘付き始めた。
酔ったように蛇行しながら空を旋回し始める。仕舞いには高度を落とし、ふらふらと頭を振りながら降下していた。
人の耳には聞こえない、特殊な音波のようなものが、魔笛から発されているのかもしれない。
とうとう二人の目の前に、巨大な鳥が降り立った。遠くから見るのとは違い、ゾーンは想像以上の迫力だった。
身体の割に小さい頭は、禿げ上がり、身体を覆っている黒と白の羽毛は、お世辞にも美しいとは言えない。あちらこちらに毟りとられた後やすでに塞がった傷が目立つ。この鳥は、共食いをして生存する稀な種で有名だ。おそらくは、これらの傷はそのときにできたもの達であろう。
「ビャア」
耳障りな潰れたような声で、ゾーンが鳴いた。
赤い目が不機嫌な様子を物語っている。今、ライシェルが魔笛を吹くのをやめたとしたら、間違いなく、この鳥は二人に襲い掛かってくるだろう。