AKANE
魔笛使いのライシェルが手懐けたのでなければ、一体どうやってこんな強暴で頭の悪い鳥の背に乗るなどできたのか、と黒の騎士達は一斉に顔を見合わせた。
「俺は、一時的に笛の音で大人しくさせることはできても、この鳥だけはどうしても手懐けることができない。だが、陛下は違った。このゾーンは、陛下にのみ従う陛下だけの僕だ。俺は何もしていない」
きょとんとした顔できょろきょろと他の騎士達の顔色を伺う朱音の姿は、なぜか年齢よりも幼くさえ見えてしまう。なのに、こんな少年王が、この巨大鳥を手懐けてしまうなど、その場にいた誰もに仰天させた。
「それでですね、わたしから提案なんですけど・・・、もしよかったら、“ノムラさん”の背中に乗っていきませんか?」
一瞬その場の空気が凍りついた。
“ノムラさん”は、朱音がつけたゾーンの名前である。
どうして“ノムラさん”なのかと言うと、この禿げ上がったゾーンの頭が、ご近所の野村さんにそっくりだったからである。全くもって失礼な話だが、きっと一生野村さんは自分がこんな鳥の名前のモデルにされたことなどは知ることはないだろう。
空中でしきりに“ノムラさん”とゾーンに向かって呼び続けている朱音に、ライシェルも実を言うと少し気にはなっていた。しかし、朱音は「野村さんによく似てるから」とだけしか答えなかったので、敢えてそれ以上突っ込まないことにしたのだ。
「ノ・・・、ノムラさん??」
無言のままのフェルデンに代わり、アレクシが思わず聞き返した。
「あ、このおっきな鳥の名前です。ノムラさんて言います。因みにわたしがつけました」
自信満々に言う朱音を、皆ぽかんと見つめるばかりだった。
「で、そのノムラさんに乗るとは?」
突拍子もない提案に、フェルデンは聞き返した。
「えっと、実はこのノムラさん、こう見えてすっごくよく飛ぶんです。フェルデン殿下は早くヴィクトル陛下のところまで帰らないといけないでしょ? ノムラさんに乗れば、馬よりずっと早く着けるかな・・・って思ったんです。・・・って、ダメでしょうか?」
彼の予報が当たらなかったことは嘗て一度もない。
「俺は、一時的に笛の音で大人しくさせることはできても、この鳥だけはどうしても手懐けることができない。だが、陛下は違った。このゾーンは、陛下にのみ従う陛下だけの僕だ。俺は何もしていない」
きょとんとした顔できょろきょろと他の騎士達の顔色を伺う朱音の姿は、なぜか年齢よりも幼くさえ見えてしまう。なのに、こんな少年王が、この巨大鳥を手懐けてしまうなど、その場にいた誰もに仰天させた。
「それでですね、わたしから提案なんですけど・・・、もしよかったら、“ノムラさん”の背中に乗っていきませんか?」
一瞬その場の空気が凍りついた。
“ノムラさん”は、朱音がつけたゾーンの名前である。
どうして“ノムラさん”なのかと言うと、この禿げ上がったゾーンの頭が、ご近所の野村さんにそっくりだったからである。全くもって失礼な話だが、きっと一生野村さんは自分がこんな鳥の名前のモデルにされたことなどは知ることはないだろう。
空中でしきりに“ノムラさん”とゾーンに向かって呼び続けている朱音に、ライシェルも実を言うと少し気にはなっていた。しかし、朱音は「野村さんによく似てるから」とだけしか答えなかったので、敢えてそれ以上突っ込まないことにしたのだ。
「ノ・・・、ノムラさん??」
無言のままのフェルデンに代わり、アレクシが思わず聞き返した。
「あ、このおっきな鳥の名前です。ノムラさんて言います。因みにわたしがつけました」
自信満々に言う朱音を、皆ぽかんと見つめるばかりだった。
「で、そのノムラさんに乗るとは?」
突拍子もない提案に、フェルデンは聞き返した。
「えっと、実はこのノムラさん、こう見えてすっごくよく飛ぶんです。フェルデン殿下は早くヴィクトル陛下のところまで帰らないといけないでしょ? ノムラさんに乗れば、馬よりずっと早く着けるかな・・・って思ったんです。・・・って、ダメでしょうか?」
彼の予報が当たらなかったことは嘗て一度もない。