AKANE
王都中が分厚い灰の雲に覆われ、どんよりとしていた。そのせいで、視界もひどく悪い。時折ぽつりぽつりと頬にあたる水滴は、雨の前兆だ。
「この積荷はなんだ」
城門番が、馬車の積荷を指差して訊ねた。
「これは、国王様お達しで国中の腕のいい鍛冶職人から買い占めた武器でございます。」
城門番の男は、ふむと考えながら、ちらりと馬車にかけられた布をめくりあげた。
「なんだ、箱ばかりじゃないか」
武器商人は言った。
「ええ、なんせあちこちから取り寄せたものばかりですので、場所ごとに箱が違っているんです。ほら、ここに製造場所と、職人の名前が焼き付けられているでしょう? こっちはハンセン、それでこっちはミドルという職人の手によるものです」
見ると、確かにしっかりとした木箱の側面に、地名人物名が見受けられる。箱の大きさはまちまちで、大きいものや、中くらいのもの、小さいものまでさまざまである。
「ちょっと中身を確認させてもらうぞ」
城内に持ち込まれる物ということもあり、城門番は慎重になっている。
「ええ、構いませんとも」
武器商人がそう言うので、城門番はいそいそと馬車の積荷置きへと乗り込んだ。
その途端、馬車にかけられている布でさっと蓋をされ、中に暗闇が訪れた。暗闇にまだ目が慣れていない城門番は、慌ててきょろきょろと周囲を見回すが、何も見えない。
「おい、武器商人! 暗くてよく見えん! 布をあげろ」
そういうが、武器商人は押し黙ったまま何も返事をしない。
何かがおかしいと気付いたときには、暗闇の中でぎいと箱の蓋が次々に開き、そして城門番はいつの間にか周囲を囲まれていた。
ぐいと羽交い絞めにされ、
「な、何をするっ!・・・ぐ・・・」
そのまま手際良く首を刃物で掻っ切られていた。