AKANE

『この文が、我弟フェルデン・フォン・ヴォルティーユの元に無事に辿り着くことを、切に願う。
 フェル、わたしはまんまとゴーディアに嵌められてしまったらしい。この過ちのせいで、多くの人の命が失われてしまった。そしてこの白亜城も、もういくらも持たないだろう。わたしの命運もここまでのようだ。
 しかし、わたしはここで国とともに滅びる覚悟はできている。
 もしこの文を読んでいるとすれば、恐らくは今、白亜城を目指していることだろう。だが、もうお前の手に国王の印が渡ったのならば、もうこの城へ戻る理由も無い。
 城へは戻らず、生き残った騎士達を連れてどこかに身を隠すのだ。お前だけは生き残り、そしていつの日か、再びこのサンタシを再建してくれ。
 今このときを持って、わたしヴィクトル・フォン・ヴォルティーユは、国王の座を退き、全権を実弟フェルデン・フォン・ヴォルティーユに委譲する。

    ~ヴィクトル・フォン・ヴォルティーユ~

 追伸:この文をお前が受け取ったということは、クロウ王がわたしとの約束を守り、お前をディアーゼから連れ戻したということになるな。フェル、お前の口から彼に、“すまなかった”と伝えておいて欲しい。そして、その身はもはや自由の身だとも・・・。』




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