AKANE
雨音のせいで、気付かなかったが、たしかに堅く閉じていた城門が、全開し、ぞくぞくとゴーディア兵が進軍してきている様子が窓から伺える。
「王都の民はどうした? まさか、手出しはしておらぬだろうな」
ゴーディア兵が口を開きかけたそのとき、彼の背後から別の人物が現れ、話を遮った。
「もうよいわ、下がれ下がれ」
「ヘ、ヘロルド閣下! ご到着でしたか・・・!」
ゴーディア兵は深く頭を下げたまま、すっと身を脇へと引っ込めた。
「ヴィクトル国王陛下、お初にお目にかかりますかな。わたしはゴーディアの現、最高司令官ヘロルド・ケルフェンシュタイナーと申します」
ひょろりとしたひどく姿勢の悪い男は、落ち窪んだ目をぎょろりとヴィクトル王に向け、大きな口を不気味に引き上げた。彼は後方に、ぞろぞろとゴーディア兵を引き連れていた。
「なるほど、そなたがゴーディアの新しい最高司令官か。では率直に訊かせて貰おう。そなたはゴーディアの新国王クロウ陛下の側近ということか?」
ヘロルドは、魔女のように尖った鉤鼻の上に、気色の悪い皺を寄せて不気味な笑みを浮かべる。
「まあ、そうとも言えるでしょうな」
逃げ場のない所に追い詰められたヴィクトル王だったが、全く怖気づいた様子など微塵も感じさせず、更にヘロルドに質問を浴びせた。
「それなら話は早い。なぜ、そなたの主は停戦条約をいとも簡単に破り捨てたのだ。無抵抗な我国の商戦を砲撃し、無抵抗な乗組員を見せしめに斬首した? 側近のそなたならばその理由を知っている筈だろう。このような非人道的な行い、許される筈がない!」
ヘロルドはヴィクトル王の言葉を小うるさそうに、左手の小指を耳の穴に突っ込み、その骨ばって曲がった指をくりくりとまわして見せた。
「王都の民はどうした? まさか、手出しはしておらぬだろうな」
ゴーディア兵が口を開きかけたそのとき、彼の背後から別の人物が現れ、話を遮った。
「もうよいわ、下がれ下がれ」
「ヘ、ヘロルド閣下! ご到着でしたか・・・!」
ゴーディア兵は深く頭を下げたまま、すっと身を脇へと引っ込めた。
「ヴィクトル国王陛下、お初にお目にかかりますかな。わたしはゴーディアの現、最高司令官ヘロルド・ケルフェンシュタイナーと申します」
ひょろりとしたひどく姿勢の悪い男は、落ち窪んだ目をぎょろりとヴィクトル王に向け、大きな口を不気味に引き上げた。彼は後方に、ぞろぞろとゴーディア兵を引き連れていた。
「なるほど、そなたがゴーディアの新しい最高司令官か。では率直に訊かせて貰おう。そなたはゴーディアの新国王クロウ陛下の側近ということか?」
ヘロルドは、魔女のように尖った鉤鼻の上に、気色の悪い皺を寄せて不気味な笑みを浮かべる。
「まあ、そうとも言えるでしょうな」
逃げ場のない所に追い詰められたヴィクトル王だったが、全く怖気づいた様子など微塵も感じさせず、更にヘロルドに質問を浴びせた。
「それなら話は早い。なぜ、そなたの主は停戦条約をいとも簡単に破り捨てたのだ。無抵抗な我国の商戦を砲撃し、無抵抗な乗組員を見せしめに斬首した? 側近のそなたならばその理由を知っている筈だろう。このような非人道的な行い、許される筈がない!」
ヘロルドはヴィクトル王の言葉を小うるさそうに、左手の小指を耳の穴に突っ込み、その骨ばって曲がった指をくりくりとまわして見せた。