AKANE
「と、とんでもありません、ヘロルド閣下! 我々はクロウ陛下の命に従います」
ヴィクトル王は、あと少しのところで兵士を味方に取り付けることができなかったことに、落胆せずにはいられなかった。
しかし、ここで気を抜く訳にはいかない。兵士が完全にヘロルド側についてしまったことで、ますます状況は苦しくなった。
「そうと分かれば、この愚王を殺すのに手を貸すがよい!」
ヘロルドの歪んだ表情に気付いた者は、ヴィクトル王唯一人。
一斉に剣を構え、にじり寄ってくる兵の殺気に、ヴィクトルは短剣を握る手が汗ばむのを感じた。
「あんた、あの夜船ん中で殺したと思ってたが、やっぱ生きてたんだな」
魔力を封じられたままのアザエルを、背後から刺したことについて、まるで悪びれた様子を全く見せず、ファウストは笑った。
「そこをどけ、野蛮な賊めが」
アザエルは手を翳すと、いつもより数倍は威力があろう水針を間髪入れず無数に発射した。
しかしその攻撃は、ファウストが瞬時に作り出した炎の盾により、接触した瞬間に蒸発させられてしまう。
ファウストの能力の前に、アザエルの魔術が完全に無効化されてしまっていた。ファウストは、明らかに以前よりも遙かに強い魔力を身に付けているようであった。
「ま、俺としては、魔力の封じられていないときのアンタと闘ってみたかったし? 儲けもんだけど」
「・・・どこでこれ程の魔力を得た」
変わらぬ表情のまま、アザエルは言った。その手には、新たに水を凝縮して作り上げた剣を出現させている。
ファウストはじっと愉快そうに目を細め、アザエルの間合いからひょいと後ろに飛び退いた。経験から、この男に下手に近付けば只では済まないと、直感で感じていたのだ。
「あれ、あんたの主人から聞いてない? てっきり、もう知ってるもんだと思ってたんだけど」
ぽりぽりと人差し指で鼻頭を掻くと、もう一方の手にファウストはメラメラと燃える手の平サイズの玉を出現させ始める。
ヴィクトル王は、あと少しのところで兵士を味方に取り付けることができなかったことに、落胆せずにはいられなかった。
しかし、ここで気を抜く訳にはいかない。兵士が完全にヘロルド側についてしまったことで、ますます状況は苦しくなった。
「そうと分かれば、この愚王を殺すのに手を貸すがよい!」
ヘロルドの歪んだ表情に気付いた者は、ヴィクトル王唯一人。
一斉に剣を構え、にじり寄ってくる兵の殺気に、ヴィクトルは短剣を握る手が汗ばむのを感じた。
「あんた、あの夜船ん中で殺したと思ってたが、やっぱ生きてたんだな」
魔力を封じられたままのアザエルを、背後から刺したことについて、まるで悪びれた様子を全く見せず、ファウストは笑った。
「そこをどけ、野蛮な賊めが」
アザエルは手を翳すと、いつもより数倍は威力があろう水針を間髪入れず無数に発射した。
しかしその攻撃は、ファウストが瞬時に作り出した炎の盾により、接触した瞬間に蒸発させられてしまう。
ファウストの能力の前に、アザエルの魔術が完全に無効化されてしまっていた。ファウストは、明らかに以前よりも遙かに強い魔力を身に付けているようであった。
「ま、俺としては、魔力の封じられていないときのアンタと闘ってみたかったし? 儲けもんだけど」
「・・・どこでこれ程の魔力を得た」
変わらぬ表情のまま、アザエルは言った。その手には、新たに水を凝縮して作り上げた剣を出現させている。
ファウストはじっと愉快そうに目を細め、アザエルの間合いからひょいと後ろに飛び退いた。経験から、この男に下手に近付けば只では済まないと、直感で感じていたのだ。
「あれ、あんたの主人から聞いてない? てっきり、もう知ってるもんだと思ってたんだけど」
ぽりぽりと人差し指で鼻頭を掻くと、もう一方の手にファウストはメラメラと燃える手の平サイズの玉を出現させ始める。