AKANE
ファウストの企みは、いよいよ王都に止まらず、サンタシ国全土の破壊へと膨らんでいた。全ては、クロウ王の意識を自らに引き付けるが為に・・・。
フェルデンは地獄と化した王都の中、まだ被害を受けていない馬屋の中から比較的利口そうな馬を一頭拝借し、白亜城を目指し駆けていた。先程から、城から放たれる炎の玉は降り止んではいるが、尚、火の勢いは衰えていない。
(砲撃が止んだ・・・。クロウが止めたのか・・・?)
フェルデンは、馬を走らせながら、燃え移る火を最小に止めようと剣で燃える物という物と切り落としていた。しかし、たった一人の騎士の力では、それも大した助けにもなってはいない。
「くそっ・・・!」
自分の無力さに、フェルデンは燃えて崩れ落ちた屋根の残骸を剣で乱暴に突き刺した。
ザバと突然湧き起こった水流に、その辺り一体の家々の火が鎮火された。
「無様だな、フェルデン・フォン・ヴォルティーユよ」
民家の屋根に、碧く美しい髪がたなびく。
「アザエル・・・!」
咄嗟に剣を構えようとして、フェルデンははっと鎮火された建物の影から現れた、気高き馬に跨る人の存在を認めてその手を止めた。
「よくぞ無事で戻ってくれた、我弟よ」
僅かに吊り上ったブラウンの瞳に、金のウェーブがかった髪。
この人の無事を、どれだけ祈ったことか。
「兄上!!」
そしてヴィクトル王の腕の中にはもう一人の姿があった。黒く艶やかな髪の少年、クロウ王である。
「フェル、ここからはここにいるクロウ陛下も街の鎮火に手を貸してくれるそうだ」
朱音はフェルデンの無事な姿を目にし、ひどく安堵していた。
(良かった、無事で・・・)
しかし、その束の間の喜びは、すぐさま掻き消されることとなる。
「陛下!!!」
フェルデンは地獄と化した王都の中、まだ被害を受けていない馬屋の中から比較的利口そうな馬を一頭拝借し、白亜城を目指し駆けていた。先程から、城から放たれる炎の玉は降り止んではいるが、尚、火の勢いは衰えていない。
(砲撃が止んだ・・・。クロウが止めたのか・・・?)
フェルデンは、馬を走らせながら、燃え移る火を最小に止めようと剣で燃える物という物と切り落としていた。しかし、たった一人の騎士の力では、それも大した助けにもなってはいない。
「くそっ・・・!」
自分の無力さに、フェルデンは燃えて崩れ落ちた屋根の残骸を剣で乱暴に突き刺した。
ザバと突然湧き起こった水流に、その辺り一体の家々の火が鎮火された。
「無様だな、フェルデン・フォン・ヴォルティーユよ」
民家の屋根に、碧く美しい髪がたなびく。
「アザエル・・・!」
咄嗟に剣を構えようとして、フェルデンははっと鎮火された建物の影から現れた、気高き馬に跨る人の存在を認めてその手を止めた。
「よくぞ無事で戻ってくれた、我弟よ」
僅かに吊り上ったブラウンの瞳に、金のウェーブがかった髪。
この人の無事を、どれだけ祈ったことか。
「兄上!!」
そしてヴィクトル王の腕の中にはもう一人の姿があった。黒く艶やかな髪の少年、クロウ王である。
「フェル、ここからはここにいるクロウ陛下も街の鎮火に手を貸してくれるそうだ」
朱音はフェルデンの無事な姿を目にし、ひどく安堵していた。
(良かった、無事で・・・)
しかし、その束の間の喜びは、すぐさま掻き消されることとなる。
「陛下!!!」