AKANE
 風の目の中にいた二人は、同化する瞬間に、巨大な竜巻の目の中にいた者と、同じ空間へと入り込むことに成功した。
「やっぱりあなたでしたか、ヘロルドさん・・・!」
 朱音は目を細め、王都を破壊し尽くそうとする、この嫌な男を睨みつけた。
「ク、クロウ陛下・・・!」
 慌てふためいた様子で、ヘロルドは胸元に何かをごそごそと隠すような仕草をした。
「ヘロルドさん、このままでは王都が本当に消えて無くなってしまいます。今すぐこの竜巻を消して下さい!!」
 クリストフは朱音の隣で、かなりの体力を消耗し、額に大粒の汗を浮かべて荒い息をついている。
「お前・・・! どうやって地下牢を抜け出した・・・!?」
 ヘロルドはひどく慌てた様子で、クリストフを睨み見た。
「さっき、何か隠されましたね、ヘロルド閣下。一体何を隠されたのです?」
 クリストフは、首を傾げじっとヘロルドの落ち窪んだ目を見据えた。
「な、何のことだか。それよりも、なぜお前がこうしてここに居るのかという質問に先に答えて貰おう」
 ヘロルドは忌々しげに大きな口を歪めた。
「どうしてここに居るのか・・・ですか」
 可笑しそうに笑い、クリストフはぽりぽりと揉み上げを数回左手の小指で掻く仕草をした。
「クリストフさん、魔城の地下牢って・・・?」
 朱音はヘロルドのただならぬ言葉に、思わずクリストフを振り返っていた。
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