AKANE
 暖かい血が手の平を伝い落ち、その雫はぱらぱらと黒く渦巻く風の中に吸い込まれていく。
「万物と共鳴する・・・力・・・?」

“風と・・・一体になる・・・!”
 
風の鼓動を聴く。
 風の鼓動は、ひどく淋しく、哀しい音。
 この風達は泣いている・・・。
 そして、怒っている・・・。

(大丈夫、きっと自由になれるよ。クリストフさんが一緒なら、あなたたちもきっと・・・)
 ほんの少し風が温かくなった気がした。
「王都を壊すのは、もうやめて・・・」
 朱音がそう呟いた途端、ゆっくりと竜巻が転回し、そのまま王都の外へと向けて歩み出す。
「もう、休んでいいよ」
 巨大化していた竜巻の勢力が僅かに弱まった。ゆっくりゆっくりと王都の外へと這い出す竜巻は、次第に力を弱めていく。
「アカネさん」
 頭上から降ってきた声に驚き、見上げると、クリストフが竜巻の目の中に空から舞い戻ってきた。
「クリストフさん・・・!!」
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