AKANE
見つかってしまったのだ。
なんとかして逃げたい気持ちはあるが、下を覗くと恐怖で足が凍りつく。
いっそのこと、このまま一気に下まで飛び降りてやろうかとも思った。そうすれば、いいように利用されなくても済むだろうし、この後待ち受けている恐ろしい儀式の被害者にならずとも痛みを感じる前に死ねるだろう。朱音はふとそんなことを考えながら、虚ろな目で遠い地上を見つめていた。
そうしていると、もしかすると奇跡が起きて、空を飛べるかもしれないなどという非現実的な考えさえも頭を過ぎり始める。
「アカネ様! 馬鹿な考えはおやめください!」
頭上から侍女の声。
侍女の目からも、朱音がこのまま身を投げてしまいそうに見えていたのだ。
侍女の声は何の励ましにもならない、ましてや、この後の儀式で死に行く朱音にとっては、寧ろここで身を投げることの方が救いの道のようにも感じられた。
ぐっと拳を握り締め、唇を噛み、朱音は震える足で静かにその場に立ち上がった。
吹き付ける風は強く、ゆらゆらと朱音の身体を揺さぶる。
ここから飛べば、本当にこの風に乗って逃げ遂せるような気がしてならなかった。
瞳を開くと、もう一度地面を見据えた。
「・・・!!」
碧い髪・・・。
朱音の見据える地上に、碧く長い髪がたなびいている。遠く離れた男の表情は見えない筈だったが、その目がじっと朱音を見つめているのがはっきりとわかった。
(邪魔しないで・・・)
朱音はまたもや立ち塞がろうとする碧く美しい男に、これ以上の邪魔をさせる気になれなかった。
(どいて・・・!!)
朱音は強くアザエルを睨むと、次の強い風に身体をまかた。
「アカネ様!!」
侍女達の悲鳴を他所に、朱音は風を切って落下していく。
空を飛べるなんてやはりある訳なかったんだ、と落ちていく高速の景色の中で、やけに冷静に朱音は冷静に考えていた。そして、あの憎い男アザエルが困り果てる顔は見たかったな、なんてことも。
なんとかして逃げたい気持ちはあるが、下を覗くと恐怖で足が凍りつく。
いっそのこと、このまま一気に下まで飛び降りてやろうかとも思った。そうすれば、いいように利用されなくても済むだろうし、この後待ち受けている恐ろしい儀式の被害者にならずとも痛みを感じる前に死ねるだろう。朱音はふとそんなことを考えながら、虚ろな目で遠い地上を見つめていた。
そうしていると、もしかすると奇跡が起きて、空を飛べるかもしれないなどという非現実的な考えさえも頭を過ぎり始める。
「アカネ様! 馬鹿な考えはおやめください!」
頭上から侍女の声。
侍女の目からも、朱音がこのまま身を投げてしまいそうに見えていたのだ。
侍女の声は何の励ましにもならない、ましてや、この後の儀式で死に行く朱音にとっては、寧ろここで身を投げることの方が救いの道のようにも感じられた。
ぐっと拳を握り締め、唇を噛み、朱音は震える足で静かにその場に立ち上がった。
吹き付ける風は強く、ゆらゆらと朱音の身体を揺さぶる。
ここから飛べば、本当にこの風に乗って逃げ遂せるような気がしてならなかった。
瞳を開くと、もう一度地面を見据えた。
「・・・!!」
碧い髪・・・。
朱音の見据える地上に、碧く長い髪がたなびいている。遠く離れた男の表情は見えない筈だったが、その目がじっと朱音を見つめているのがはっきりとわかった。
(邪魔しないで・・・)
朱音はまたもや立ち塞がろうとする碧く美しい男に、これ以上の邪魔をさせる気になれなかった。
(どいて・・・!!)
朱音は強くアザエルを睨むと、次の強い風に身体をまかた。
「アカネ様!!」
侍女達の悲鳴を他所に、朱音は風を切って落下していく。
空を飛べるなんてやはりある訳なかったんだ、と落ちていく高速の景色の中で、やけに冷静に朱音は冷静に考えていた。そして、あの憎い男アザエルが困り果てる顔は見たかったな、なんてことも。