AKANE
「何っ!?」
そのとき初めてファウストは地下道での様子と、今の朱音の様子が少し違っていることに気付いた。
あの時の朱音の眼は、怒りと哀しみで何も映してはいなかったというのに、今の朱音の眼はそうでは無かった。黒く大きな美しい目は、哀しげな色を含ませてはいたが、我を失ってなどいなかった。それだけでなく、ひどく憐れんだ瞳をファウストに向けてじっと見つめ返してくる。
ファウストの炎の剣を握った手は、どこからそんな力が出ているのかと疑いたくなる程の握力で、しっかりと掴れていた。
「そ、そんな目で俺を見るんじゃない・・・!」
ファウストが怒り任せに掴れた手を振り切ろうとするが、どうやってもその手を振り切ることができない。
ファウストの手を掴んだまま、朱音は曇った空をゆっくりと見上げた。
ポツリ、ポツリ、と水滴が落ち、朱音の頬を濡らした。
(雨・・・!)
炎を使うファウストがもっとも苦手とする、雨だった。いくら多くの力を吸収して強くなってきたファウストとはいえ、雨は炎の魔力を弱める。
ザーと降り出した雨は、朱音の蒼黒の髪をしっとりと濡らし、雫を滴らせてゆく。
(こいつの仕業か・・・!)
そのとき初めてファウストは地下道での様子と、今の朱音の様子が少し違っていることに気付いた。
あの時の朱音の眼は、怒りと哀しみで何も映してはいなかったというのに、今の朱音の眼はそうでは無かった。黒く大きな美しい目は、哀しげな色を含ませてはいたが、我を失ってなどいなかった。それだけでなく、ひどく憐れんだ瞳をファウストに向けてじっと見つめ返してくる。
ファウストの炎の剣を握った手は、どこからそんな力が出ているのかと疑いたくなる程の握力で、しっかりと掴れていた。
「そ、そんな目で俺を見るんじゃない・・・!」
ファウストが怒り任せに掴れた手を振り切ろうとするが、どうやってもその手を振り切ることができない。
ファウストの手を掴んだまま、朱音は曇った空をゆっくりと見上げた。
ポツリ、ポツリ、と水滴が落ち、朱音の頬を濡らした。
(雨・・・!)
炎を使うファウストがもっとも苦手とする、雨だった。いくら多くの力を吸収して強くなってきたファウストとはいえ、雨は炎の魔力を弱める。
ザーと降り出した雨は、朱音の蒼黒の髪をしっとりと濡らし、雫を滴らせてゆく。
(こいつの仕業か・・・!)