AKANE
 それは、これほどの武器を瞬時に作り出せる程に、今この場所は神兵達の血で溢れ返っているということを意味していた。

 二人は、何千という神兵を一人残らず倒した。
 全てを倒すころには、フェルデンの息は上がり、信じられないことに、アザエルの額にも汗が滲んでいた。
 一面に神兵達が横たわる光景を見つめ、フェルデンは剣を鞘にしまった。
「言っておくが、まだこれで終わった訳ではないぞ。このザルティスの軍はほんの一部に満たない」
 アザエルの言葉に、フェルデンは驚愕し振り返る。
「一体どういうことだ!」
 アザエルはその言葉に何も答えず、空から舞い降りたスキュラの背に軽やかに飛び乗った。 
「おいっ!!」
 スキュラはアザエルを乗せ、雨雲に覆われた街の方へと飛び去ってゆく。
 街だけを覆った奇妙な雨雲はいつの間に現れたのか、さっきまで街を燃やしていた炎は、今や雨によって鎮火され、燻った黒い煙をあちこちから上げているのみだ。
(クロウ・・・!)
 はっとして、フェルデンは乗り手を失って彷徨う一頭の馬に跨ると、少年王の元へと駆けた。
(無事でいてくれ・・・!!)
 
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