AKANE
 天を仰ぎ、彼は呼んでいたのだ。天のイカズチを・・・。

『ピシャアアアアアアアア』
 ドドドドドという轟きとともに、天から眩い光の矢が落ちた。
 いつの間にか、王都の空は真っ黒な雨雲で覆われている。
 次々に天から降り注ぐ雷は、痛みを感じる暇も与えず、神兵を墨へと変えてゆく。
 ザルティスの神兵達は、天からのイカズチと魔王の強大な魔力を目の当たりにし、恐怖で逃げ惑い始めていた。



 今から約二百年前、“マルサスの危機”と呼ばれる歴史的な事件が起こった。
 ゴーディアの王都マルサスは、味方の裏切りにより、敵国サンタシの兵の侵入を許したのである。
 当時、ブラントミュラー公爵家はゴーディア国内で最も有力な貴族で、その一人息子ロベルトは魔力を持たずして生まれたものの、大層頭の切れる男で有名であった。
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