AKANE
 棺と寝台を囲む祭司達が何か不気味な呪文のようなものをぶつぶつと唱え始めた途端、風もないのにパタパタと男達のローブがはためき始める。
 そして急に空気が冷たくなるのがわかった。
 寝台の近くにいた祭司の一人が、寝台にあったハデスの短剣を手にとると、それを朱音の胸につき立てた。
 その瞬間、凄まじい痛みが胸に走り、朱音は堪らずに悲鳴を上げた。深く突き刺さった短剣は燃え滾るように熱く感じられた。痛みの中で朱音の視界は暗転していった。
(フェルデン・・・)
 朱音は最期に心の中で小さく呟いた。


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