AKANE
「久しぶりね、クロウ。お前に会えて嬉しいわ」
ふと可愛らしい声がしたかと思うと、黒いベールのおりた帽子を目深に被った貴婦人が、お付きの者の手を借りて、ちょうど静かに馬の背から降り立ったところであった。
クロウは、死んだ筈の父に加え、新たに現れた人物に目を丸くした。
「あらあら、あんまり嬉しくて声も出ないのかしら・・・?」
白い手袋をはめた華奢な手が、静かに帽子を脱がせると、現れたのは二百年前にゴーディアを追放された義理の母、ベリアルの可憐な顔が露になった。
「母上・・・」
二百年の月日を経て、少し歳をとったベリアルではあったが、未だその可憐さは失われてはおらず、クロウは只々呆然とベリアルを見つめた。
「アザエル、あなたにもまた会えて喜んでいるのよ、わたくし」
ただ一つ髪の色を除いて変わらず美しい姿のベリアルは、魔王の側近アザエルに言葉を掛けた。
「お前達のせいで、この二百年、わたくしがどれだけ苦しんできたか理解できないでしょう・・・? けれど、その悪夢もいよいよ今日この日で終わるのよ」
ぷくりとした可愛らしい唇が不敵に笑う。大きくくりくりした目は、美しく輝き空にはためく魔王ルシファーに注がれていた。その目はこれ以上無い程に愛おしげで、そして悲しみと悦びの色を帯びている。
「クロウ陛下! 貴方のお父上は既に亡くなったのでは!?」
ディートハルトが当然の疑問を投げ掛けた。
ふと可愛らしい声がしたかと思うと、黒いベールのおりた帽子を目深に被った貴婦人が、お付きの者の手を借りて、ちょうど静かに馬の背から降り立ったところであった。
クロウは、死んだ筈の父に加え、新たに現れた人物に目を丸くした。
「あらあら、あんまり嬉しくて声も出ないのかしら・・・?」
白い手袋をはめた華奢な手が、静かに帽子を脱がせると、現れたのは二百年前にゴーディアを追放された義理の母、ベリアルの可憐な顔が露になった。
「母上・・・」
二百年の月日を経て、少し歳をとったベリアルではあったが、未だその可憐さは失われてはおらず、クロウは只々呆然とベリアルを見つめた。
「アザエル、あなたにもまた会えて喜んでいるのよ、わたくし」
ただ一つ髪の色を除いて変わらず美しい姿のベリアルは、魔王の側近アザエルに言葉を掛けた。
「お前達のせいで、この二百年、わたくしがどれだけ苦しんできたか理解できないでしょう・・・? けれど、その悪夢もいよいよ今日この日で終わるのよ」
ぷくりとした可愛らしい唇が不敵に笑う。大きくくりくりした目は、美しく輝き空にはためく魔王ルシファーに注がれていた。その目はこれ以上無い程に愛おしげで、そして悲しみと悦びの色を帯びている。
「クロウ陛下! 貴方のお父上は既に亡くなったのでは!?」
ディートハルトが当然の疑問を投げ掛けた。