AKANE
20話 世界最強の敵(前編)
禍々しい光に包まれた父に目をとられ、彫刻のように動かないクロウに、魔王ルシファーは手を翳した。
「クロウ陛下・・・!」
凄まじい轟音と、砂埃が辺り一面に霧のように舞い上がった。
「!!??」
あまりに一瞬のことで、訳がわからないクロウは、驚きで周囲を見回す。
気付けば、クロウは土の上に倒れていた。そしてその身体は何かに庇うように覆い被されている。
「お怪我はありませんか・・・?」
砂埃のせいで一切の視界がきかない中、さらりと美しい碧髪がクロウの視界に映る。
「アザエル・・・」
クロウは驚く程に自らの声が弱々しいことに気付く。
少しずつ治まりゆく砂の霧の向こうに、まだ変わらぬまま同じ姿で宙から見下ろす魔王ルシファーの姿を見た。
家一軒が丸ごと入ってしまう程の巨大な穴がぽっかりと地面に開き、そこから真っ黒な湯気のようなものが上がっている。明らかに、それはクロウを殺そうとした結果であった。
「父上・・・、なぜ・・・」