AKANE
 クロウは自分そっくりの父の姿を見上げ、自らも同じように翼を生やした。
 しかし、少年身体のクロウは、父ルシファーよりも小ぶりの翼である。
「ゆくぞ」
 僅かに目を閉じた目を見開いたと同時、バサリと翼を羽ばたかせ、ルシファーは息子クロウに攻撃を仕掛けた。
 巨大な首切り鎌に対抗する為、クロウは咄嗟に巨大な盾を創り出していた。
『バチイッ』
 青い電気の火花を散らせ、クロウの盾は見事に父の大鎌を受け止めていた。
「ほお、咄嗟の割にはいい反応のようだ」
 ルシファーはその手に掛ける力を弱めることなく、ぐいとクロウの盾を押し返してくる。
「だが、これはどうだ」
 すると、その手を止めないまま、ルシファーは保護できていないクロウの下半身を膝頭で勢いよく蹴り上げた。
 衝撃でびゅんと後方に吹き飛ばされたクロウは、なんとか翼を広げることで体勢と立て直すが、その隙をルシファーは許さない。
再び鎌を振り上げ、それをまた寸でのところでクロウの盾が防ぐ。今度は腕いっぱいに力を込め、ルシファーの攻撃をうまく反動をつかって弾き返す。
だが、ルシファーはその反動を利用して更に素早いスピードで鎌を華麗に振り下ろす。鎌の攻撃を防ぐことに気をとられているうちに、クロウはルシファーの蹴りを何発か命中させられていた。
「下の二人がそんなに気になるのならば、さっさと得意の雷(いかずち)でマブを片付けてやればすっきりするのではないか」
 息一つ乱さないルシファーは、嫌な笑いを含んだ目でクロウに言った。
 それは、クロウ自身自らの手でディートハルトとフェルデンをマブ諸共に滅ぼさせようと企む残忍な言葉であった。
「・・・・・・」
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