AKANE
 蒼黒の髪をふわりとなびかせた後、ぶわりと生暖かい風が巻き起こった。
(しまった・・・!!)
 瞬きをする速さでルシファーがクロウの背後に回り込む。手には巨大な鎌。
『ズシャッ』
 振り向いたクロウの眼には信じられないものが映っていた。
「何のつもりだ、アザエル」
 ルシファーの鎌の刃を、赤く黒い剣が受け止めていた。
(なぜアザエルが・・・!?)
「貴様は誰だ」
 碧い髪から覗く横顔は、忠誠を誓う主に向けられているものなどではなく、ひどく冷ややかなものであった。
「何を言う、わたしはルシファーだ」
 武器に入れる力を緩めないまま、ルシファーはつまらない冗談を、とでも言うように笑った。
「貴様が我主でないことは既にわかっている」
 アザエルの言葉に、ルシファーはむっとした様子で鎌を引っ込めて一旦後ろへ飛び退いた。
「・・・いつから気付いていた?」 
 面白くなさそうに武器をだらりと下ろすと、ルシファーはアザエルを見つめた。
「クロウ陛下を攻撃した時からだ」
 アザエルはルシファーと対峙したまま血の剣を構え直す。
「最初からわかっていたのか? ではなぜわたしの元についたふりをした・・・?」
 ルシファーの機嫌が見るからに悪くなってゆく。生温かい風が再びぶわりと起こり始める。
(どういうことだ・・・!?)
 クロウはアザエルの口にした言葉に戸惑いを感じていた。
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