AKANE
「はて。気がついたときには姿が見えなくなっておりましたので・・・」
鳩と会話ができるなど、おかしな男であった。そして、この男は、まだまだフェルデンの知り得ない謎を多く持っている筈だった。
クリストフは、肩の上の鳩の頭を優しく撫でると、小さく頭を下げ、
「ではこれで失礼します」
と言って、ふわりと宙へ浮かび上がった。
ここは城の最上階。窓が存在せず、屋根との狭間に存在する云わば物置きとでも言える場所。フェルンデンですらこんな場所が存在したことを今の今まで知らなかった。
吹き込む風は優しく、紳士の身体を持ち上げた。
見上げると、外部と繋がる小さな天窓。その窓が開け放され、そこから風が吹き込んでいたのだ。
「待って、クリストフ!」
意外にも、声を出したのは少年王クロウであった。
「アカネからの伝言です」
クリストフは驚いたようにクロウを見つめた。
「貴方は素晴らしい友人だったと。そして、自分を責めることは決してしないで欲しいと」
ほんの少し悲しそうに微笑むと、クリストフは頷いた。
「わかりました。クロウ陛下、ありがとうございます」
ぶわりと巻き起こった風で、クリストフは勢い良く天窓の外へ吸い込まれるようにして飛び去って行った。
クリストフはきっと、朱音について何かを知っていた筈だ。フェルデンは光の差し込む天窓をじっと見上げてそう思った。
「ルシファー、貴方の息子は立派な王になるだろうね」
クリストフは心地よい風に身体を任せ、静かに呟いた。既にこの世を去った、亡き友人に向けて・・・。
鳩と会話ができるなど、おかしな男であった。そして、この男は、まだまだフェルデンの知り得ない謎を多く持っている筈だった。
クリストフは、肩の上の鳩の頭を優しく撫でると、小さく頭を下げ、
「ではこれで失礼します」
と言って、ふわりと宙へ浮かび上がった。
ここは城の最上階。窓が存在せず、屋根との狭間に存在する云わば物置きとでも言える場所。フェルンデンですらこんな場所が存在したことを今の今まで知らなかった。
吹き込む風は優しく、紳士の身体を持ち上げた。
見上げると、外部と繋がる小さな天窓。その窓が開け放され、そこから風が吹き込んでいたのだ。
「待って、クリストフ!」
意外にも、声を出したのは少年王クロウであった。
「アカネからの伝言です」
クリストフは驚いたようにクロウを見つめた。
「貴方は素晴らしい友人だったと。そして、自分を責めることは決してしないで欲しいと」
ほんの少し悲しそうに微笑むと、クリストフは頷いた。
「わかりました。クロウ陛下、ありがとうございます」
ぶわりと巻き起こった風で、クリストフは勢い良く天窓の外へ吸い込まれるようにして飛び去って行った。
クリストフはきっと、朱音について何かを知っていた筈だ。フェルデンは光の差し込む天窓をじっと見上げてそう思った。
「ルシファー、貴方の息子は立派な王になるだろうね」
クリストフは心地よい風に身体を任せ、静かに呟いた。既にこの世を去った、亡き友人に向けて・・・。