AKANE
しかし、近衛兵の案内で王室に姿を現したゴーディアの遣いを見た途端、フェルデンの美しい顔が険しくなった。
「お前、生きていたのか・・・」
フードを脱いで現れたのは、燃えるような深紅の髪。褐色の肌。あの日と変わらぬ野生の動物並みの鋭い緋色の眼。
「ああ。この通り今じゃクロウの下僕と化して、奴に力も奪われちまったけどな」
何でもないような口調で、ファウストは笑みさえ浮かべて言った。
「今度ばかりはまじで用事で来た。もうアンタの国をぶっ壊したりはしねぇから安心しろ」
王都を破壊した張本人であるこの青年に、フェルデンが怒りを感じない筈はない。
けれど、なぜその張本人である彼を遣いとしてわざわざサンタシに送り込んできたのか、何か少年王クロウの意図があることを感じ取った。
「まさか、あいつが・・・?!」
ユリウスの質問に答えるように、フェルデンはこくりと深く頷いた。愛する母国を破壊されたユリウスは目を吊り上げ、ファウストを睨みつけている。
「クロウ王から文を預かってきた。これを渡したら、悪いけど俺は帰るぜ。そっちの騎士が今にも噛み付いてきそうだしな」
懐から取り出した藍色の布を、近くの兵に取りに行かせる。
確かに、布の下から現れた書状には、黒い蠟で封が施され、その上にゴーディアの象徴である黒翼が焼き付けられている。
フェルデンは、丁寧にその文を開く。