AKANE
(あれじゃあまるで、この少年王が儀式により覚醒するより以前からフェルデン陛下のことを知っていたみたいだ・・・)
 ユリススの中で腑に落ちないまま、その奇妙な疑問点はぐるぐると出口を無くした迷路のようにずっと漂っている。

「ありがとう、もうここでいい」
 クロウの言葉にはっと我に返ったユリウスは、いつの間にか白亜城の城門を抜け、入り口までやって来ていたことに初めて気付いた。
 慌てて馬を降りるが、クロウがそれに静止をかけた。
「君は馬を置いてこなきゃいけないでしょ? ここからはライシェルもいるし、一人で大丈夫だよ。部屋の場所はしっかり頭に入っているし」
「しかし、そういう訳には・・・」
 いくらなんでも客人をここで放っておく訳にもいかず、ユリウスが返答しようとしたとき、
「ユリウス殿。わたしがクロウ陛下についていますので、お気になさらず馬を置いてきては? 後から追いついて来てくだされば済むことです」
 盲目の槍遣い、ライシェルが尤もな意見を口にし、ユリウスはしぶしぶそれに頷くしか無かった。
「で、では・・・。急いで馬を置いてきます。すぐに追いつきますので、護衛と先に行きかけていてください」
 にこりと微笑んだクロウを見て、ユリウスはくるりと馬屋に向けて馬を走らせた。
 これが後々取り返しのつかないことになるとは思いもせずに・・・。

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