AKANE
 後ろで、控えていた護衛達が何やら問い掛ける声が聞こえたが、もう今はそれどころではなかった。
「ユリ!! どういうことだ!? 説明しろっ!!」
 ほんのさっき、あの塔の上で大勢の民衆を前にゴーディアとサンタシの友好を宣言したばかりで、これからの新たなる時代への喜びを、二人で分かち合ってたというのになぜあの少年王がその直後にそのような行動を起こさねばならなかったのか、フェルデンには理解の範疇を超えていた。
「すみません、全部俺の責任です。俺が馬を置いている間に、ライシェル殿とクロウ陛下が先に城内へ・・・。すぐに後を追いかけたのですが、俺が中に入ったときには、城の中の者は皆意識を失っていて、クロウ陛下は既に・・・」
 ひらひらと風で靡く王服は、足に纏わりついて煩わしいらしく、フェルデンはちいっと舌打ちして足元の服の裾を払った。それでも成る丈早く歩き、フェルデンは一刻も早く事の真相を確かめる為に足を動かした。
「それと、実はもう一つ・・・」
 ユリウスが大切なもう一つのことを報告しようとしたそのとき、フェルデンは王室の扉をバンと乱暴に開いた。
 部屋の中心に目を置いたまま、ピタリと静止して動かなくなってしまったフェルデンにユリウスは疑問を感じ、ふと長身の彼を見上げた。
 すると、彼の美しく透けるようなブラウンの瞳が大きく見開かれていた。すっと通った男らしい鼻筋や口はまるで幻でも見ているかのような驚きでいっぱいであった。
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