AKANE
2話 逃亡
(なんでわたしがこんな目に遭わなきゃなんないの??)
朱音は、すっかり土埃で汚れてしまっている、寝巻き代わりの着慣れたTシャツとハーフパンツ姿のまま、木の陰で息を潜めていた。
それというのも、不思議な金色の光を通り抜けた後、アザエルという謎の男に抱えられたまま次に見た光景は、洞窟の中だったのだ。
湿っぽい洞窟の中では、二人が通り抜けた途端にみるみるうちに縮んで消えてなくなった光の穴の他に、他に何も見当たらなかった。アザエルがどういったマジックを使ったのかは定かではないが、家で寝ている朱音を攫って何の説明もなしに強引にこの洞窟に連れて来られたという事実だけは確かだった。
こんな夜更けにいつまでもこんなところにいる訳にもいかないし、夜が明けると家の者が朱音の不在に気付いて騒ぎ始めるはずだ。
「いいかげん降ろして!」
不機嫌な朱音の声に意外にもあっさりと手から解放したアザエルは、突然片膝を地面につけると、恭しく朱音の前に礼をとった。
「先程までの御無礼をお許しください。これはあなたのお父上、魔王陛下最期のご命令にございます。どうぞご理解頂きたい」
暗闇の中でよく分からなかったが、男の服装は普段朱音が目にしているようなものではない。それに、アザエルの言っていることといえば、正気とは到底思えなかった。
(とにかく、家へ帰らないと・・・)
一見すると女性のようにも見えなくもないこの美しい男だが、先程抱えられていたときの力強さを思うと、そう簡単には帰してもらえそうにはない。
もぞもぞと朱音は足先を落ち着きなく動かしてみせた。
朱音は、すっかり土埃で汚れてしまっている、寝巻き代わりの着慣れたTシャツとハーフパンツ姿のまま、木の陰で息を潜めていた。
それというのも、不思議な金色の光を通り抜けた後、アザエルという謎の男に抱えられたまま次に見た光景は、洞窟の中だったのだ。
湿っぽい洞窟の中では、二人が通り抜けた途端にみるみるうちに縮んで消えてなくなった光の穴の他に、他に何も見当たらなかった。アザエルがどういったマジックを使ったのかは定かではないが、家で寝ている朱音を攫って何の説明もなしに強引にこの洞窟に連れて来られたという事実だけは確かだった。
こんな夜更けにいつまでもこんなところにいる訳にもいかないし、夜が明けると家の者が朱音の不在に気付いて騒ぎ始めるはずだ。
「いいかげん降ろして!」
不機嫌な朱音の声に意外にもあっさりと手から解放したアザエルは、突然片膝を地面につけると、恭しく朱音の前に礼をとった。
「先程までの御無礼をお許しください。これはあなたのお父上、魔王陛下最期のご命令にございます。どうぞご理解頂きたい」
暗闇の中でよく分からなかったが、男の服装は普段朱音が目にしているようなものではない。それに、アザエルの言っていることといえば、正気とは到底思えなかった。
(とにかく、家へ帰らないと・・・)
一見すると女性のようにも見えなくもないこの美しい男だが、先程抱えられていたときの力強さを思うと、そう簡単には帰してもらえそうにはない。
もぞもぞと朱音は足先を落ち着きなく動かしてみせた。