AKANE
「失礼! おれたち、王都へ向かっているんだけど、最近王都で何かあったんですか?」
ユリウスがいつもの朗らかな笑みを浮かべて男に歩み寄っていくと、壮年の男も気の良さそうな顔で、おう、と短く返事をした。
「ああ、あんたら、他国の人かい? 昨日、復活祭があったんだよ」
馬に跨ったまま、フェルデンの眉がぴくりと反応した。
「復活祭?」
ユリウスは聞き慣れない言葉を反復した。
「なんだ、復活祭を知らないのかい? 復活祭は、このゴーディアの国王陛下、ルシファー魔王陛下が、天上よりこの地へ舞い降りられた有り難い日のことだよ」
フェルデンは当然のことながら、ゴーディアの復活祭のことは聞いたことがあったし、この国では、神に変わって強大な魔力を持つ魔王ルシファーを信仰する慣わしがあることも知っていた。
「おじさんは魔王陛下を見てきたんですか?」
世間知らずな青年を装って、ユリウスは男に詰め寄った。
「あはは、ほんとにお前さん何も知らないんだなあ。魔王様は国民に姿をお見せにはならいよ。わたしも魔王様のお姿は偶像でしか拝見したことはないよ」
荷台から手を離し、男はぽんぽんと小柄なユリウスの肩を叩いた。
「あんたら、魔王様のお姿を一目見ようとわざわざ他国からここまでやって来たんだろう? 伝説によると、魔王様は絶世の美貌をお持ちだということだし、あんたらみたいにこうしてやって遠くから来る者も少なくないそうだ」
残念だったな、と男は馬上のフェルデンにも哀れみの表情を向けた。
ユリウスが何か言いたげにモスグリーンの目をフェルデンへやった。
「ま、そういうことだ。だからこうしてわたしも祭りで売れ残った品物を故郷の街へ持って帰るところなのさ。せっかくだし、王都を満喫して帰るといい」
男は、降ろした荷台の取っ手をよっこらせ、と持ち上げると、愛想のいい笑顔を作ってまた山道を歩み始めた。
「ああ、おじさん、ありがとう!」
ユリウスは荷台を引く男の背に向って手を振ると、馬の背に乗ろうと手をかけた。
「あ! そうそう。あんたら、ラッキーだよ。今年の復活祭は特別だから!」
荷台を引きながら、男は付け加えた。
ユリウスがいつもの朗らかな笑みを浮かべて男に歩み寄っていくと、壮年の男も気の良さそうな顔で、おう、と短く返事をした。
「ああ、あんたら、他国の人かい? 昨日、復活祭があったんだよ」
馬に跨ったまま、フェルデンの眉がぴくりと反応した。
「復活祭?」
ユリウスは聞き慣れない言葉を反復した。
「なんだ、復活祭を知らないのかい? 復活祭は、このゴーディアの国王陛下、ルシファー魔王陛下が、天上よりこの地へ舞い降りられた有り難い日のことだよ」
フェルデンは当然のことながら、ゴーディアの復活祭のことは聞いたことがあったし、この国では、神に変わって強大な魔力を持つ魔王ルシファーを信仰する慣わしがあることも知っていた。
「おじさんは魔王陛下を見てきたんですか?」
世間知らずな青年を装って、ユリウスは男に詰め寄った。
「あはは、ほんとにお前さん何も知らないんだなあ。魔王様は国民に姿をお見せにはならいよ。わたしも魔王様のお姿は偶像でしか拝見したことはないよ」
荷台から手を離し、男はぽんぽんと小柄なユリウスの肩を叩いた。
「あんたら、魔王様のお姿を一目見ようとわざわざ他国からここまでやって来たんだろう? 伝説によると、魔王様は絶世の美貌をお持ちだということだし、あんたらみたいにこうしてやって遠くから来る者も少なくないそうだ」
残念だったな、と男は馬上のフェルデンにも哀れみの表情を向けた。
ユリウスが何か言いたげにモスグリーンの目をフェルデンへやった。
「ま、そういうことだ。だからこうしてわたしも祭りで売れ残った品物を故郷の街へ持って帰るところなのさ。せっかくだし、王都を満喫して帰るといい」
男は、降ろした荷台の取っ手をよっこらせ、と持ち上げると、愛想のいい笑顔を作ってまた山道を歩み始めた。
「ああ、おじさん、ありがとう!」
ユリウスは荷台を引く男の背に向って手を振ると、馬の背に乗ろうと手をかけた。
「あ! そうそう。あんたら、ラッキーだよ。今年の復活祭は特別だから!」
荷台を引きながら、男は付け加えた。