AKANE
「あの、殿下? 今はサンタシから遣いの者が来ているとかで、アザエル閣下はこちらへは来られないかと・・・」
朱音は久しく聞くことの無かった“サンタシ”という言葉に、ドキリとした。
もしかして、フェルデンが自分を取り戻しに追いかけて来てくれたのでは、という期待に胸が高鳴った。
「サンタシから!? どんな人だった? 背は高かった? 髪の色は? 瞳は?」
やけに食いついて来る朱音の迫力に圧され、ルイは数歩後退りしながら言った。
「さあ・・・、僕は直接見ていないので詳しいことはわかりませんが。見た者の話によると、使者は二人で、一人は長身、もう一人は小柄だったと。深くフードを被っていたせいで髪や眼の色までは確認できなかったようです」
二人と聞いて、朱音は少し首を捻るが、ひょっとすれば小柄はロランかもしれないと顔を綻ばせる。そうなると、やはり長身はフェルデンとしか考えられない。
「殿下、どうしてそんなにサンタシの遣いが気になるんです? もしかして、二百年前に失くされた記憶が戻ったのですか?」
ルイは復活の儀式によって直接異世界アースからクロウの肉体が呼び戻されたと解釈していた。その為、アザエルの手によって鏡の洞窟を通って朱音が連れて来られた事実も、そして一月程の間サンタシの白亜城で保護されていたこと事実も知らなかった。
「・・・戻らないよ。戻る訳ないよ、わたしはクロウじゃなくて朱音なんだから」
目の前の少年王子はまた奇妙なことを口にすると、それきり黙り込んでしまった。
ルイは軽薄なことを口走ってしまったことを深く反省し、麗しい黒髪の主に償いの笑みを送った。
「殿下、そんなに気になるのなら、御自分の目で確認したらいいのですよ。今夜は殿下の即位パーティーです。各国の客人が殿下に会いにやって来ます。きっとその使者もそのパーティーに出席する筈です」
朱音は思ってもいない機運に感謝した。
(フェルデンに、フェルデンに、また会えるかもしれない・・・!)
朱音は久しく聞くことの無かった“サンタシ”という言葉に、ドキリとした。
もしかして、フェルデンが自分を取り戻しに追いかけて来てくれたのでは、という期待に胸が高鳴った。
「サンタシから!? どんな人だった? 背は高かった? 髪の色は? 瞳は?」
やけに食いついて来る朱音の迫力に圧され、ルイは数歩後退りしながら言った。
「さあ・・・、僕は直接見ていないので詳しいことはわかりませんが。見た者の話によると、使者は二人で、一人は長身、もう一人は小柄だったと。深くフードを被っていたせいで髪や眼の色までは確認できなかったようです」
二人と聞いて、朱音は少し首を捻るが、ひょっとすれば小柄はロランかもしれないと顔を綻ばせる。そうなると、やはり長身はフェルデンとしか考えられない。
「殿下、どうしてそんなにサンタシの遣いが気になるんです? もしかして、二百年前に失くされた記憶が戻ったのですか?」
ルイは復活の儀式によって直接異世界アースからクロウの肉体が呼び戻されたと解釈していた。その為、アザエルの手によって鏡の洞窟を通って朱音が連れて来られた事実も、そして一月程の間サンタシの白亜城で保護されていたこと事実も知らなかった。
「・・・戻らないよ。戻る訳ないよ、わたしはクロウじゃなくて朱音なんだから」
目の前の少年王子はまた奇妙なことを口にすると、それきり黙り込んでしまった。
ルイは軽薄なことを口走ってしまったことを深く反省し、麗しい黒髪の主に償いの笑みを送った。
「殿下、そんなに気になるのなら、御自分の目で確認したらいいのですよ。今夜は殿下の即位パーティーです。各国の客人が殿下に会いにやって来ます。きっとその使者もそのパーティーに出席する筈です」
朱音は思ってもいない機運に感謝した。
(フェルデンに、フェルデンに、また会えるかもしれない・・・!)