生きて生きて、生きる覚悟はありますか?
主人「ああ?、ああ‥もう、分かったよ!しないから!這って行ってくださあい!」嫁「うう、う、う‥、……」
声が聞こえなくなった。
主人は嫁が顔を出すであろう窓に、塀の上を歩いて近づく。
〈メキメキ…メキメキ…グシャ、メキ〉 玄関のドアが壊されたであろう音がする。
主人「おおい!早くしてくださあい!」
嫁「う、うるさあい!あ、あんまにこ声たてなーでよ!よってくるじゃないい、い、い」
主人「あ、はい‥(もう手遅れだって…つうか…)」
嫁「う、うう」子供「ウギャアア、コギャアア、アアアア、ァアアウウウ」
主人「(てめえらの方がうるせえし…)」子供を抱え、這いながら逃げてきた嫁の顔は酷い。化粧が崩れ、髪が乱れ、涎、鼻水、涙が乱れ、まるでゾンビだ。
「(う、うわあ…)」

どん引きだった。

主人「ほ、ほ、ほら!早く!こっち!」手を伸ばす。

「う、う、」嫁が窓から下を見る。「……無理いい!」

塀の幅は20cm、塀から屋根までは余裕で飛び移れる距離。だが、窓から、屋根は防犯目的で離れている。窓の下は勿論ゾンビだらけ。主人「そこを渡れ!いや、渡ってください!そして子供はこっちに投げろ!」
主人が指を指したのは壁に横ぎっている柱だ。そこを足場にして渡れというのだ。壁から出ている柱の幅は僅か1cm。 嫁「無理、むりいい、はしごお!」主人「あるかああ早く子供をこっちへなげろ、それしかない!」
「…う、う、ううう」嫌がりながらも、窓から子供を出し始める。嫁「ううう…むりいい!」子供を引っ込める。確かに下はゾンビだらけだから仕方ないかもしれない。主人「早くしないと!ゾンビが階段を登ってくるぞう!」振り返り階段を気にする嫁。来てないじゃない!だいたいあいつらに階段なんてー〈ギ〉嫁「サーーー」血の気が引いていく。〈ギ、ギ、ギ、〉確かに階段を登ってくる。「ああ‥」〈ギ、ギ、ギ〉「あなた助けてえ!登ってきたああ!」「よし!子供をこっちに渡せ!早く!」「う、うん‥」泣く子供を抱き上げ、再び窓から出す。「よし、思いっきり投げろ!必ず受け止めてやるから!」「絶対ね!落としたら、あんたを殺すからね!」「おお!ばっちこおい!」〈ブンーーーー〉
子供が宙を舞った。
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