〇●ポーカーフェイス●〇

しばらくすると宏太が部屋に戻ってきた





そして手に持っていた札束を私に手渡した





「これでチャラだ」




そう私とは目も合わさない





私はその札束を握りしめ、立ち上がる




部屋から1人出る





部屋を出る前に私は振り返りもう一度部屋全体を見渡し、息を飲んだ





あの暖かかった時間を一瞬思い出す




私の肩をぎゅっとだいてくれたこと





頭を優しく撫でてくれたこと






そんな映像がながれる





私は大きく深呼吸をした




「この子に手出したらその時はあんたたちのこれから人生ないと思って。」




そう力なく倒れている西岡俊介に目線を落とした





レストランを出ようとした時、ガシッと腕を掴まれる





「来るな…‼」





そう私は叫ぶ






息を切らし、ふらふらになりながら立っている西岡俊介





「東城…‼「あんたもあれしってて私のこと紹介したんじゃないの⁇…もうやめて…怖いんだよ…」






声が震える






西岡俊介が何も知らなかったって
知ってる






私のこと本当に仲間として大事に思ってくれてるってわかってる





でもそれを信じる勇気すら私にはなかった






西岡俊介は力を抜く






私は腕を振り払い、レストランを飛び出した





ふらふらと一人歩く





何も考えたくない





何も受け止めたくない






思い出したくない





こんなのいつもと一緒






慣れてるから大丈夫






そう自分に何回も言い聞かす






街ゆく人は私を横目で見る






ボロボロに破れているワンピース
血だらけの身体





乱れた髪型





それでも突き刺さるのは冷たい目だけで、声をかけてくる人なんて誰もいない





ここはそういうところ





みんな自分のことで精一杯





面倒なものには目を向けない
それか面白がって指差して笑う




こんな世界こりごりだ
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