赤い靴
体育教官室

怖い
怖い

なんて言おう…

「失礼しま…す」

「暗っ!!まぁ座れよ」

「………」

「昨日先生探しに行ったんだぞー」

マーシャンから聞いた

「どこにいたんだ?」

「家の近くの海です」

「そっか、それはわかんないな、なるほどね」

「先生、クラス名簿見た時びっくりしたよ!さぼるような子じゃなかったから」

「……はぁ」

近くで聞いていた別の先生が話しかけてきた

「未幸は進路どうするんだ?」

「…一応養成所が決まっていて、今通信教育という形で課題を送っています」

「………」

どうせ馬鹿にされる…

「おまえは役者になるのか!」

「はい」

「すごいな!」

えっ

「今度課題先生にも見せてくれよ」

「はい…わかりました」

「ガンバレヨ!有名になったら芸名考えてやるからな」

「はい」

初めて頑張れよって言ってもらえた

涙がでた



お母さんにもお父さんにも

「頑張れ」って言ってほしかったんだ…

怖いと思っていた先生は一瞬にして印象が変わった

敬語を使って余り会話をしない私達生徒に対し

‘敬語を使え’

と厳しく指導する先生達にたいし

いつの間にか会話ができなくなり

コミュニケーションのとりかたがわからなくなり

大人に心を開けなくなっていた

それが先生に暖かく受け止めてくれる事によって

剥がされたのだ

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