3 year 君と過ごした最後三年  (version.mystery and suspense)


イラブ―は別名エラブウミヘビ。


沖縄では渦状に巻かれ乾燥させた姿のままのそれが売られていた。豚足とともに煮込まれた黒い筒状の物体が、器に盛りつけられテーブルに上った。


コーレーグスは泡盛という焼酎に、島唐辛子という唐辛子を漬けた調味料のことだった。ソーキそばにはよくついてきたけど、アルコールと辛さの刺激がり苦手だった。


山羊の汁やイカ墨の入った黒い汁、チラガーという、豚の顔の皮をはいだものの薄切りが並んだこともあった。


「ごめんなさい。ムリです……」


本州で産まれ育ったわたしには、味覚的にも視覚的にムリなものもあった。


沖縄にいってまで三食すべてを全国規模の外食チェーンで過ごしたことのある人間は、きっとわたしぐらいなのだろうと思う。ある意味、貴重な体験をしているのだと思う。


子いぬ似なこきつねのぬいぐるみは、そんなわたしを背を下にして見詰めていた。疑問符でも頭に浮かべるよう、点の眼でわたしを見詰めていた。


「どこみてんのよ」


リクラシングチェアに体を埋め、それを手に取り胸に抱きしめた。顔が潰れてかわいそうなことになっている。


誰もいることのない家は、空虚な空疎で、そして静かだった。そのままひとり眠りにつくのに、時はそう必要なかった。


その時、すべての終わりに祈りか捧げられはじめていた。


それをわたしが知ることはなかった。










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