3 year 君と過ごした最後三年  (version.mystery and suspense)


なぜか不安を感じた。四時間もの間、彼は一体なにをするのだろうか。そう気になった。


短縮授業を終えるのが十二時半。「受験勉強をしろ」という名目のもと、学校側は生徒たちを早々に帰宅の途につかせている。


実際には面談の最中の校舎を静かにしておきたいとか、それに使う教室を確保したいというもくろみもあるのだろうけど、人が残ることを良しとはしない。


中学からは給食も用意されていない。残るならその準備もしておかなければいけない。


「じゃあまたあとで、オレここら辺でちょっと……」


彼は突然そういった。眼だけをこちらにむけ、顔は違うほうをむいている。


「わかった。じゃあ、あとで」


わたし思考を切り替え、それを小さく肩の横で手を振り見送る。


「悪いな」


歩行者を優先した大通りの交差点を、裕也はひとり駆けだしていく。点滅している信号を駆けだしていく。時を置かずそれが閉ざされていく。


多くの場合、彼はわたしの家の前でわたしがでてくるのを待ってくれていた。ふたりで学校にむかい、途中どこかで友達に会えば、別々に歩きだしていた。


最後までふたりということもなかにはあったけれど、そう多いことではない。


裕也はしきりに視線をどこかにむけていた。しきりに顔を違うほうにむけていた。きっと友達を見ていたに違いない。わたしはそう思った。


地面に足先を落とした。靴にこびりついていた雪を落とした。時計を見る。朝のホームルームまではあと二十分ほど。


見上げた信号に、変わる気配はない。











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