3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
「そういえば……」
以前にもおなじメニューを食べたことがあるのを、わたしは思いだしていた。春だった。学校だった。屋上だった。三月の暖かい風に、わたしの頬は濡れていた。
中学校の卒業式には二年生だけが参加した。下級生代表だ。
その日、わたしの恋は散った。
十四の春。閉ざされた春。はじめての失恋。はじめての恋の涙は散った。
翌日は雨で寒い日だった。体が、心が温もりを求めていた。
裕也はいつもどおりにわたしを待ってくれていた。
わたしは重い空気を払おうと、いつも以上に話しをした。彼の好む話しを持ちだしてみては、おどけふざけわらってみた。
彼はなにも話そうとはしなかった。ただ頬を笑み、時折、相槌を打つだけだった。
待ってろ。このベーカリー前でいったその言葉が、その日、最初の言葉だった。