3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
feelings
episode 1,0
―― 三年前 一二月
「電気よし、暖房よし、髪も制服もよし」
わたしはひとつづつ眼と手で確認しながら玄関へとむかいは、誰もいない家にむかい、いってきます。とつぶやいてみた。
当然、返事のあるわけもない。
ドアを開ければ空は灰色に染まり風は冷たく、雪の結晶は小さく舞い降り消えていた。
玄関から門扉までのわずかな距離にはレンガが敷き詰められていた。
右手には小さいけれど庭、左手には駐車スペースがあった。
前に進めば三段だけの急な階段。その先に枠組みと縦に張った棒だけの門扉。
レンガと庭の境界線は雪で曖昧になっていた。門扉はその重さをどこか増しているように見えた。
雪がその生を落ちては消え、終えていく。それでも止む時を知らず、降りつづいていく。