3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
「裕也おはよう」
わたしはそういって彼に声をかけた。
「おはよう、遥香」
彼はそういってわたしに眼をむけた。
呼吸が姿を白く変えていく。湿気をおびて消えていく。
「お待たせ。寒いね」
「待ってたオレはもっと寒いけどな」
「お母さんがいないもんだから、いろいろ消すのに時間がかかっちゃって……。ごめん」
「それよりひとりで留守番なんて大丈夫だったのか?」
「さすがに中三だし、たった一晩だから」
「なら構わないさ」
裕也は小さく呼吸をはきそういった。わたしのカバンについた黄色い糸くずを取り除いてくれた。
張っていた肩が落ちたようにも見える。耳や鼻が腫れたように赤く染まっている。少しでない待ち時間が知れる。
きっと、ひとり家に残されたわたしのことを心配していてくれたのだろう。わたしはそう思った。