隷従執事の言いなり
食後の紅茶を一口運んだ時だった。
『お待たせーっ!』
ハイテンションで扉を開いたのは、
『茉里、お前はもう少しおしとやかにできんのか…』
予告通り茉里おばさまで。
その後ろにみえるのが多分…。
『あら、教育に問題は無いから大丈夫よ』
茉里おばさまはそう言って、後ろに立っていた子を私達から見えやすいように前に出した。
『ほら波留、あいさつは?』
『こんにちわ』
ぺこりと頭を下げたのは、私の予想通り波留ちゃんで。
ってちょっと待って。
「波留ちゃん…って、おお男の子…?」
波留と呼ばれたその子は、どっからどうみても少年にしか見えなくて、私の記憶との食い違いが生まれる。
『紛れもなく僕は男ですよ?おねーさん』
生意気そうに笑う波留ちゃ…波留くんは、とても昔と同一人物には思えない。
「え、え、ちょっと、意味が分から…だだだってフリフリは?あれはどういう事?」
間違いなく女の子だったはず!
だって男の子はあんなフリフリ着ないじゃん!
『あらやだ椿ちゃんったらーっまんまと騙されてくれたみたいっ!』
嬉しそうに笑うのは茉里おばさまで。
騙す?何が?
私の頭はより混乱してしまう。
『椿…お前の記憶にある波留はさぞや可愛いだろう…だがあれは只の茉里の我儘で、本当の波留はこっちだ』
『我儘だなんて失礼ね!波留だって喜んでたわよっ。ねー波留っ?』
『はははモチロンデスヨ』
つまり、私の記憶の中の波留ちゃんはおばさまが女装させてたってこと…?
「だ、騙された…」