隷従執事の言いなり
『そうあからさまにビビられると煽られると言うか、ざわつくって言うか』
「な、なに言って…」
よっこいしょ、と立ち上がってギロリと私を睨みつける。
そして前髪を片手で掻き上げて、一歩一歩私に近づく。
とても中一が醸し出す雰囲気とは思えない。
よからぬオーラを纏っている。
パパ、間違いなく歪んでるよこの子…!!
『ねぇ、なんで逃げんの?』
「べ、別に逃げてるわけじゃ…」
波留くんが一歩踏み出せば私は一歩後ずさり、波留くんが二歩踏み出せば私も二歩後ずさる。
だってなんか身の危険が…。
『逃げないでよ、椿おねーさんっ』
「ひぃっ…ってうわっ」
波留くんが急にジャンプして近づいたもんだから驚いてしまい、後ろに反りすぎた私は高いヒールのせいもあってバランスを崩し…
スローモーションに見える中、目にはいったのは波留くんの慌てた顔と、私に向ってのばされる手。
一応助けてくれようとしているらしい。
でも…多分間に合わない…っ!
「…っ!」
諦め、衝撃を予想した脳は反射的に目を瞑る。
ーーーーーしかし…
ボフッ
衝撃は、予想に反して柔らかいものだった。