隷従執事の言いなり
「な…んで…」
振り返って目にはいったのは、
『椿様』
この体温の温もりは、
『全くあぶなっかしいんですから』
紛れもなく、
「あ…お、い…」
私のただ一人の専属執事、黒峰碧本人で。
私は碧に倒れそうになった体を支えられていた。
碧の胸にくっついた背中が、少し強く握られた両肩が、熱くて、熱くて。
周りの音なんて聞こえなくなって。
至近距離で合った目が、恥ずかしくてそらしたいのにそらせない。
心臓、痛い。
『わーやだやだ。何それ王子様?』
……存在、忘れてました。
声のした方をみると、怪訝そうな顔をした波留くんがいて。
『ね、そろそろ離れたら?』
「へ?…あっ!そ、そうだよね…!」
波留くんに指摘された途端、なんだか無性に恥ずかしさがこみ上げてきて、私は慌てて碧から離れた。
「あ、ありがとね。碧」
さっきまで見れていた碧の顔を直視できない。
……うぅー…心臓おさまれ馬鹿ぁ…