隷従執事の言いなり
「碧かーわいーっ!」
相変わらず碧をからかって、肩に手を置いた時だった。
『…もう知らねえ』
「へっ?」
間抜けな声を上げてるうちに、肩においていた手はいつのまにか碧に掴まれていて。
振り向いた碧の顔は、私が見たがってたような色には染まっていなくて。
只、ほんのり赤い気がするくらい。
「な、何…?」
『何?じゃねえよ』
からかって、優位に立っていた筈だったのに。
それは何時の間にか、碧の視線だけで逆転する。
その漆黒の目で見つめられれば、逆らえなくなってしまう。
碧が掴んだ手が、熱い。
碧が触れる所全て熱を帯びて。
「はなし…て」
『なんで?』
「だって、なんか…」
『なんか?可愛い俺に手ぇ握られて今度はお前が赤面?』
可愛い…碧が、可愛い?
この碧が?
触れただけで私を惑わすこの碧が?
「碧は可愛くないもん」
『さっきは可愛い可愛いって連呼してたろ?』
あれは、違う。
だって、この碧に可愛さなんてかけらもない。
今の碧からは、男しか感じない。