隷従執事の言いなり
つまり、碧は命令に背いてまで私を迎えにきてくれたってことで。
「あり…がと」
『っとに…。気をつけろよ?お前は隙だらけすぎ』
碧は私のおでこをコツッと小突いた。
…もう、簡単にほいほい触らないでよね…。
その度にどんなに私がドキドキさせられてるか。
「気を、つけ…ます」
『よろしい』
私が素直に頷いたのに、満足そうに笑う。
その笑顔さえ、私にとったら凶器のように胸にささる。
…この、無駄に整った顔が悪い!絶対そうだ!
「碧の天然フェロモンむはむは男」
『は…?なんだそらっ』
「なんでもいいでしょ!ほら、皆のとこ帰るよ!」
碧に背を向けて歩き出す。
『お前ってたまにわけわかんねぇこと言うのな』
何もわけわかんなくない。
本当に自分のこと何にもわかってないんだから。
「私がわけわかんないんじゃなくて、碧の頭が悪いだけなんじゃない?」
私はクスリと笑いながらドアに手をかけた。
『はぁ?椿お前誰に向かって…』
碧はそこまで言って、口の動きを止めた。
その視線の先は……、
『へーー、お嬢様と秘密の密会ねぇ。やるねぇ』
ドアの真ん前に立っていた、悪の申し子、波留くんだった。