隷従執事の言いなり

碧も波留くんも急に何を言いだすのだろう。
波留くんに関してはさっき散々ブスブス言ってたじゃん!!

…え?でも、待って。今、碧が…私のこと可愛いって…。

「碧が私のこと可愛いっていった…?」

『おい!俺も言ってんだけど!』

波留くんは不満そうにそう言い張るけど、私の耳からその声は遠い。

「碧が私のこと可愛いっていった!」

可愛いという碧の言葉はゆっくり私の中にやってきて、じわっと心で暖かく弾んだ。

「うへへ」

『うっわ!きんもい顔で笑ってやがるこいつ!!』

言葉を遅れて実感した私はぽけーっと笑う。波留くんはそんな私をみて顔を歪ませる。

今度はきもい顔って言ってくれちゃって…!どっちなんだよ!

だけどそんなことはあまり気にならなくて、私は碧に可愛いと思われていたことが嬉しくて天にものぼる気持ちでふわふわしていた。

当の碧はいつもの執事の顔で凛としていて、なのに目があった瞬間…

『(か わ い い)』

波留くんに分からないように、口パクで改めてそういう碧はいたずらっぽく笑う。
私は堪らず目をそらして、一瞬で火照ってしまった頬を波留くんに悟られないように手で覆った。

『きもいって言われて何にやけてんだお前。ほんときもいな。』

波留くんのこんな言葉も今の私にはこれっぽちも届かない。




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