【短編】二目惚れ 〜歩道橋の上の恋愛小説
亮介はもちろんの事、マネージャーを含めた回りのスタッフ全員が、この奇跡の再会に気付くものはいなかった…。
ただ一人、酒井妙子だけがその話の内容を聞いた時、確信したのだった…あの時の高校生が亮介さんだったんだと…】
【亮介はプレッシャーを感じていた…。
録音スタート時、苦し紛れに飲みたくもないコーヒーを注文し、落ち着く為の時間を稼いだ…。
その時、スタジオにはいってきたのが…妙子だった…
亮介は、スタジオに入る際、チームリーダーの妙子と名刺をかわしたのだが、何故か初対面だというのに、以前から何度もあっているような気がしてならかった…
それもそのはず、歩道橋の彼女は、酒井リーダー本人なのだから…
もちろん、あれから20年以上経っている訳だし、容姿もまるっきり変わっていて、そのチャームポイントのピンクのメガネも以前はかけてはいなかった…。
ただ、赤の他人には思えなかったのも事実だった。
しかし、あんなに愛した人を実際に目にしても気付かないなんて…
時は、哀しみを癒す事もあれば、思い出を奪い去っていく事もあるようだ…。
一目惚れは、やはり一時の気まぐれな感情に過ぎないのか、…
20数年前の、およそ3分弱の恋愛は、二人の絆を完全に引き裂いた…。
ただ、それでも二人の運命は、お互いを何度も引き寄せるように、導くのだった。