ちよりさん
2
リビングには誰もいなかった。
リビングの奥に磨りガラスの格子ドアが見える。
他に部屋は見あたらないから、きっとそこが寝室なんだろう。
その気はないのに耳を澄まし、目が釘付けになる。
血液を送り出す心臓の音だけが響き、それが息を止めているせいだと気付く。
私は全てを消去するように大きく息を吸って向きを変え、玄関に向かって歩き出した。
ああ、嫌だ、いやだ。
そう思いながら玄関のドアを開けると、目の前にちよりさんがいた。
「あらぁ、おはよう。眠れた?」
「は、はい」