ちよりさん
 
リビングには誰もいなかった。


リビングの奥に磨りガラスの格子ドアが見える。

他に部屋は見あたらないから、きっとそこが寝室なんだろう。


その気はないのに耳を澄まし、目が釘付けになる。

血液を送り出す心臓の音だけが響き、それが息を止めているせいだと気付く。


私は全てを消去するように大きく息を吸って向きを変え、玄関に向かって歩き出した。


 ああ、嫌だ、いやだ。



そう思いながら玄関のドアを開けると、目の前にちよりさんがいた。


「あらぁ、おはよう。眠れた?」

「は、はい」


 
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