ちよりさん
「この家はちよりさんのなんですか」
「そう、父が残してくれた秘密の隠れ家」
ちよりさんへの憎しみが根底から崩れた。
てっきり親父のアパートに転がり込んできた愛人だとばかり思っていた。
でも、実際はアパートじゃなく一軒家だった。
しかも、川沿いの洒落た家。
そして、その家の持ち主がちよりさんだった。
これじゃ話が違う。
結婚する意思のない女性のもとに押しかけてきた中年男とその娘。
ちよりさんが愛人じゃなくて、親父が愛人?居候?
私の立場は愛人の居候だった。
親父ぃ、しっかりしてくれよぉ。
私は我留舎に置き去りにしてきた親父を呪っていた。