マザーレスチルドレン
その日は、朝から寒波が押し寄せて底冷えする夜だった。


父親は、深夜に帰ってきた。珍しく博打で大勝したらしく酒を飲んで上機嫌だった。


家にあがると父親は、寒い寒い、といいながら外套も取らず居間の石油ストーブの前にかじりついた。


しばらくすると暖まったのか、ストーブの前で父親はいびきをかき出した。


それを見て、アユミは、庭においてあった灯油のポリタンクを運び込むと居間に灯油をまいた。


すっかり寝込んだ父親のコートの背中にもたっぷり灯油をしみ込ませた。


そして父親のライターで新聞紙に火をつけると灯油で濡れた床にそれを投げた。
< 137 / 178 >

この作品をシェア

pagetop