一年と二ヵ月


「待ってください!」

腕を掴まれる。

「な、何ですか…?」


男性は真剣な目をしてる。
あたし、なんかしちゃったかな…


「もしかして、傷とかついてました?
大事に扱ったつもりなんですけど…
すみません。」

「あ、いや、違うんです。
良かったら、お礼させてください。」


お…お礼?
そんな、いいのに…。

「いや、結構です…
あたしは拾っただけなんで…。」

ていうか、あたしがぶつかったせいで
落とさせちゃったようなもんだし。

「是非させてください。
空いてる時間があったら、
この連絡先に電話ください!」

そう言って、名刺を渡される。


『まもなく、春名、春名でございまーす。』

車内放送が流れた。

「じゃあ、ここで降りるんで。
連絡、お願いしますね!」

男性は急いで降りていった。


どうしよう………


_
< 5 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop