一年と二ヵ月


最寄り駅に着いて改札を出ると、
なぜか東が待っていた。


「東?!
なんでこんな所に…」

「だんな様が、
夜道は危ないから迎えに行け、
と言われましたので。」

外では、誰が見てるか分かんないから
東はあたしに敬語を使う。


「夜道って……」

時刻はまだ6時半。
6月下旬の今は、まだ全然明るい時間。


「最近は物騒ですからね。
だんな様も心配なんでしょう。

さぁ、乗ってください。」


ドアを開けて待ち構える東。


こういうのを見ると、
あぁ、あたし『お嬢様』なんだ、
って嫌でも実感させられる。


別に、家が嫌いなんじゃなくて、
『社長の娘』であることが嫌。

周りからは好奇の目で見られて、
あたしを手玉に取ろうと、
媚びてくるやつは何人もいて。

誰を信じればいいのか分からなくなって
みんなが敵に見えてくる。


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