一年と二ヵ月


あたしが乗り込むのを見ると、
ドアを閉めて東も車に乗る。


「しっかし、あっつい。」

東が手でパタパタと扇ぐ。


「なんで迎えに来たのよ。」

思わずムッとなる口調。


「しょうがないだろ。
だんな様の言いつけを
守らないわけにはいかないんだから。」


「そうだけど…。

あたしがそういう
お嬢様染みたことが嫌いなの、
知ってるでしょ?」


「だんな様の気持ちも分かってやれよ?

歩いて帰って、
知らないやつに襲われでもしたら、
あの人気が気じゃないんだから。」

「パパは心配性なんだよ…」


昔のパパは冷めた人だったらしい。

でも、あたし達が生まれてからは
素晴らしいほどの親バカになっちゃって、
ママが最初びっくりしたって
聞いたことがある。


_

< 52 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop