一年と二ヵ月
「ねぇ、ママ?」
「んー?」
カチャカチャ、と
食器を洗う音が聞こえる。
「パパって商社で働いてるんだよね?」
「そうだよ〜。
根本トレーディングカンパニー。」
「何で最近忙しいの?
こんな忙しいのなんて珍しいじゃん。」
「なんかお得意さんの会社が
経営不振らしいよ。
ついに早紀もパパの仕事に
興味持つようになったかぁ〜。」
ニヒヒ、と笑うママを睨む。
「そんなんじゃないしっ!」
あたしは長女だから、パパの会社を
継がなきゃいけないんだろうけど、
あたしにだってやりたいことがある。
決められた人生をそのまま歩くなんて、
そんなの有り得ない。
「まだ、諦めてないの?」
控えめに聞いてくる。
「当たり前。
絶対諦めないもん。」
「そう……。」
あからさまにシュン、とするママ。
ごめんね。
でも、諦めるわけにはいかない。
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